土地を売買できれば儲かることがわかっていたにもかかわらず、どうして多くの人々が土地を買わなかったのでしょうか。それは地価が一般の物価や賃金以上に速い速度で上昇したために、土地を買うことができなかったからです。お金をためても容易には買えないわけですから、結局、先回りして借金で買ってしまうのが一番良い方法ということになりました。「土地神話」時代の「不動産格差」の根本原因は、結局「金融アクセス」における格差でした。当時の日本は慢性的な資本不足の時代でしたので、親兄弟、勤務先や共済組合、金融機関からの「借入が利用できるかどうか」によって、経済的な優位性が決定的に左右されたのです。大企業と中小企業、それぞれの従業員、給与所得者と自営業者、男性と女性、既婚者と未婚者、持ち家ファミリーと借家ファミリー……、それぞれの金融アクセスにおける有利・不利が、そのまま資産形成上の有利・不利につながりました。住宅購入のための借入に関しては、住宅金融公庫か1950年に設立されますが、はじめは融資額も少なく、銀行の住宅ローンか一般化するのは1970年代からです。1965年の家計の住宅取得資金の内訳推計(経済企画庁、以下出所『日本住宅金融史』)では、親兄弟からの借入などを含む家計の資金が約80パーセント、社内融資や共済組合などが6.5パーセント、民間金融機関8.3パーセント、住宅金融公庫などか4.7パーセントとなっています。昭和40年代後半に民間金融機関の住宅ローンは30パーセント台まで増加し、社内融資・共済組合、住宅金融公庫などもそれぞれ10パーセント前後になって、家計資金の割合は40パーセント前後に大きく低下しています。これらの内訳から見ると、基本的には自己資金や家族の援助に期待できる中堅・富裕層、次に大会社の社員や公務員といった安定した職場に就いている人々、そして当時3、4倍の競争率であった金融公庫の資金を引き当てた運の良い人々が、資金手当てに成功しました。民間の住宅ローンが提携ローンなどの形で普及していくなかでも、安定した収入が見込める給与所得者や公務員が、「金融アクセス」において引き続き有利な地位を保ってきたのでした。
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